「いつも一緒だったのに…」犬が仲間を亡くした後に見せるサインとケアのしかた

静かになった部屋で、残された犬が見せる“変化”

長年、多頭飼いをしていると、避けられないのが「死別」の瞬間です。
つい先日までじゃれあっていたのに。お互いのにおいを嗅ぎ合い、寄り添って眠っていたのに——。

ある日突然、片方の犬がいなくなる。
人間にとってもつらい出来事ですが、それを間近で体験する残された犬にとっても、それは大きな衝撃と喪失です。

「急に元気がなくなった」
「ごはんを食べなくなった」
「亡くなった子のベッドでずっと動かない」
「以前よりずっと飼い主に甘えてくるようになった」

こうした変化は、残された犬が深い不安や混乱の中にあるサインかもしれません。

本コラムでは、犬同士の死別を経験したあとの「残された犬」に、どう寄り添い、どう支えていくかを、ドッグトレーナーとしての視点でお伝えしていきます。

犬は“死”を理解しているのか?

「犬は死を理解できるのか?」という質問をよくいただきます。
これに対する明確な答えは、実は“はっきりとはわかっていない”というのが実情です。

しかし、私たちが15年以上の現場で見てきた経験から言えるのは、犬は仲間の不在を強く認識し、それに対して行動や感情が変化するという事実です。

仲の良かった犬が亡くなると、以下のような反応が見られることがあります:

  • 亡くなった場所やベッドを何度も探す

  • ごはんや散歩に興味を失う

  • 無気力、または不安定な行動(吠える・粗相など)をする

  • 飼い主のそばを離れたがらなくなる

これらはペットロスのような状態ともいえる反応です。人間のように「死」という概念を認識するかどうかは別として、犬なりに「いなくなった相手を感じ、喪失に戸惑っている」ことは間違いありません。

飼い主ができる3つの基本ケア

残された犬に必要なのは、安心感のある日常です。
人間が悲しみにくれるなかでも、次のようなポイントに注意することで、犬の情緒を少しずつ安定させていくことができます。

1. 「変えないこと」と「変えること」のバランスを意識する

犬は習慣にとても敏感な動物です。
仲間の死後、生活のルーティンまで大きく変えてしまうと、混乱やストレスがさらに増してしまうことがあります。

できる限り以下は今まで通りに保つことを意識してください:

  • 散歩の時間帯やコース

  • ごはんの時間

  • 寝る場所や生活空間

一方で、子犬や若い犬などエネルギーを持て余している場合には、新しい刺激や遊びを取り入れて気を紛らわせてあげるのも有効です。
たとえば、知育トイやトレーニング遊びなどで、「一緒に過ごす楽しさ」を再確認できる時間を増やしましょう。

2. スキンシップは「量」より「質」

いつも以上に甘えてくる犬もいれば、逆に無表情で近づいてこない犬もいます。
大切なのは、無理にかまいすぎず、そっと寄り添うことです。

犬のペースを大切にしながら、ふとしたタイミングで名前を呼んで撫でてあげる。
抱っこよりも、同じ目線で並んで座る。
こうしたさりげない接触が、犬にとって大きな安心感になります。

そして、犬が「寄ってきたくなったときに安心して寄れる空気」を飼い主が作ることが、最も重要なサポートです。

3. 残された犬の変化は、“しつけの後退”ではない

死別後、急にトイレを失敗したり、吠えやすくなったりする犬もいます。
これは、精神的な動揺から来ていることがほとんどです。決して「今までのしつけが無駄だった」ということではありません。

一時的な行動の後退が見られても、叱るのではなく、優しくリカバリーしてあげる姿勢が求められます。

たとえば、トイレの失敗が増えたら、再びこまめに誘導するようにしたり、生活空間を少しだけ狭くして安心できるエリアを作るなどの工夫が効果的です。

“犬同士の絆”を大切にしていたあなたへ

あなたは、犬同士の関係性をとても大切にしてきた方だと思います。
亡くなった子の存在が、残された犬の人生にどれほど大きな影響を与えていたか、痛いほどわかっているからこそ、「今、どう接してあげたらいいのか」と悩んでいるのではないでしょうか。

その気持ちは、必ず犬にも伝わっています。

犬は飼い主の感情を鋭く読み取ります。あなたの声のトーン、表情、動作ひとつが、犬の気持ちを大きく左右します。

だからこそ、あなたが少しずつ前を向いていくことが、残された犬にとっても何よりの“灯り”になるのです。

無理に明るく振る舞わなくてもかまいません。
ただ、そっと寄り添い、変わらない愛情を注ぎ続けること。
それが、犬にとっての最大の癒しになります。

「もう一頭」は焦らず、タイミングを見て

残された犬の様子を見て「寂しそうだから、もう一頭迎えようかな」と考える飼い主さんもいらっしゃいます。
しかし、これは慎重に検討すべきタイミングです。

まだ感情が落ち着いていない犬に、新たな刺激を与えることは、かえって不安や混乱のもとになる可能性があります。

特にシニア犬の場合、新しい犬との同居がストレスになることも多いため、犬の気持ちを最優先に考えたうえで、焦らず判断してください。

犬の心に寄り添う時間が、あなた自身を癒す時間になる

犬の死別は、家族にとっても、残された犬にとっても、深い悲しみの時間です。
けれど、その時間を一緒に歩んでいくなかで、人も犬も少しずつ癒されていきます。

残された犬の目を見て、耳を撫でて、そっと名前を呼んであげてください。
その小さな積み重ねが、「もう大丈夫」と犬に伝わり、また新しい日々への一歩になります。


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有効期限  令和8年4月5日