犬を飼い始めた頃は、「おすわり」や「待て」を覚える姿に喜びを感じていた方も多いでしょう。しかし犬も成長と共に自我が芽生え、好奇心が強くなるにつれて、呼んでもなかなか戻ってこなくなったり、外に出ると飼い主さんの指示を完全に無視してしまったりと、徐々に困りごとが増えてきます。特に「おいで」は一見簡単なようで、実はしつけるのが難しい指示の一つです。散歩中やドッグラン、公園などで「おいで!」と声をかけても愛犬が戻ってこないと、安全上の問題にも繋がりますし、飼い主さんとしても恥ずかしい思いや不安を感じる場面が出てくるでしょう。
実は、犬が「おいで」をなかなか覚えないのには理由があります。私はこれまで15年以上ドッグトレーナーとして数多くの飼い主さんと愛犬を見てきましたが、「おいで」ができない犬の多くは「呼ばれる=嫌なことが起こる」と学習してしまっているケースが多いのです。例えば呼ばれた後に爪切りやお風呂、嫌いな薬を飲ませる、楽しい遊びを中断されるなど、犬にとって望ましくない出来事が起きてしまうことが多くあります。その結果、犬は呼ばれることにネガティブな印象を抱き、飼い主さんの「おいで」に反応しなくなってしまうのです。
「おいで」が上手くできない犬の心理とは?
犬が呼ばれても飼い主さんのところに戻らない背景には、様々な犬の心理的要因が絡んでいます。犬にとって呼ばれることは本来、飼い主さんとの楽しいコミュニケーションであり、褒められる、または嬉しいことが待っているという期待感があるべきです。しかし、例えば「おいで!」の後に爪切りやシャンプー、散歩の終了など、犬が苦手意識を持つ行動が毎回繰り返されてしまうと、犬は「呼ばれる=嫌なこと」と関連付けて学習し、その結果、飼い主の指示を聞かなくなってしまいます。
もう一つよくある原因が、飼い主さんの声のトーンや態度です。犬は飼い主さんの微妙な表情や声のトーンから感情を鋭く読み取っています。イライラした態度で「おいで!」と呼んだり、焦って何度も繰り返して呼んだりすると、犬は不安を感じ、逆に距離を取ろうとします。このように、「おいで」が難しくなる原因は犬側だけでなく飼い主さんの対応にも深く関連しているのです。
プロが伝授する「おいで」を成功させるための教え方とコツ
「おいで」の基本はポジティブな関連付けをすること
「おいで」をしつける際に最も大切なことは、「呼ばれること=良いことがある」と犬に強く認識させることです。トレーニングを開始する時は、愛犬の名前を呼び、その後に「おいで!」と明るくはっきり声をかけます。そして犬があなたのもとに来たら、その瞬間に必ず褒め、好物のおやつや大好きなおもちゃで遊んであげるなど、犬にとって嬉しい経験をセットで与えることを徹底します。これにより、犬は「おいで!」と呼ばれると良いことがあると認識し、飼い主さんの呼びかけに積極的に応じるようになります。
ここで気を付けたいのが、必ず「犬がこちらに向かって動き出した瞬間」に褒めることです。タイミングがズレると、犬は何に対して褒められたのか理解できず、なかなか行動が定着しません。
「おいで」の練習は室内から始めるのがコツ
最初から外で練習を始める飼い主さんも多いですが、散歩や公園のような刺激が多い場所では、犬は飼い主さんの声を無視しやすくなります。まずは室内の落ち着いた環境で、短い距離からスタートして徐々に距離を伸ばすのが成功の秘訣です。室内で100%成功できるようになったら、徐々に外の静かな環境、公園、ドッグランなど刺激の多い場所へと難易度を上げていきましょう。
「おいで」のトレーニングで避けるべきNG行動
おいでのトレーニングでやってしまいがちな失敗が「何度も呼びかける」ことです。犬が一度で来ないからといって、何度も大きな声で呼ぶと、「すぐに来なくてもよい」と学習してしまいます。一度呼んで来ない場合は、おやつを使ったり距離を縮めたりして成功しやすい状況に調整し、再度呼んで成功体験を重ねるようにしてください。
また、「おいで」の後に犬にとって嫌なことをしないのも大切なポイントです。「呼ばれると嫌なことが起こる」と認識すると、犬は呼ばれても来ないどころか、ますます離れるようになります。特に苦手なケア(爪切りやシャンプーなど)の直前に呼ぶのではなく、必ず楽しいことが待っている状況で「おいで」を使うように心掛けましょう。
それでも「おいで」ができない時の対処法
どうしても犬が呼んでも来ない時は、「おいで」の掛け声自体を別の言葉に変えるのもおすすめです。犬が一度ネガティブな印象を持った言葉をリセットし、例えば「カム」や「こっち」など、別の言葉でポジティブな学習を再スタートすることが有効です。
最後に
「おいで」のしつけは根気強く取り組むことが大切です。すぐに結果を求めず、焦らず繰り返すことが成功の秘訣になります。愛犬との信頼関係を深めながら、ぜひじっくり取り組んでください。
犬の「おいで」のしつけでお困りの方は「街のドッグトレーナー」にお気軽にご相談ください!